私たち、人間の身体には皮膚、筋肉、骨、血管、神経、脳、心臓、肝臓など、さまざまな働きを持つ器官がありますが、すべての器官は細胞によってできています。また、人体の細胞の合計は、約60兆個あるといわれていますが、どの細胞も、もとをただせば、ひとつの受精卵から変化してできたものです。
つまり、私たちの身体のあらゆる細胞は、父親の精子と母親の卵子が受精してできた受精卵が細胞分裂して、すべての細胞の基になる細胞が生まれ、そしてこれがまた分化していろいろな器官の基になる細胞が作られるのです。
こうしてできた私たちの細胞は、その中心に核と呼ばれる膜で包まれたかたまりがあります。そしてこの核の中に棒のような形をした染色体があります。 通常、人体を形成している体細胞はひとつの細胞の中に染色体が46本あります。 この46本の染色体のうち、44本は常染色体とよばれ、2本ずつ同じ染色体が対になっています。 残りの2本は性染色体で、女性はX染色体を2本、男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持っています。 男性の場合の染色体を示すと以下のようになります。 そしてこの24種類の染色体1組分をヒトゲノムと呼んでいます。
染色体を構成しているのはDNA(デオキシリボ核酸)と呼ばれる分子です。 このDNAは長いひも状になっていて、ひとつの細胞に畳み込まれているDNAを伸ばすと約2メートルにもなります。DNAは1887年に発見され、その後、1953年になって、有名なワトソンとクリックによってこれが2本の鎖状の分子がからみあった二重らせん構造であることが証明されたことにより、現在の分子生物学の新しい展開が始まりました。
二重らせんを構成する鎖はそれぞれリン酸と糖がつながって基本構造を形成し、その上に4種類の核酸塩基が並んでいます。
この4種類の核酸塩基が遺伝情報に関係する重要な働きをすることがわかりました。さらに、DNAの4種類の核酸塩基はタンパク質を作る一種の暗号であり、その組み合わせによって異なるタンパク質が作られるということが明らかになっています。そしてこの暗号によってタンパク質を作るDNAのことを遺伝子と呼びます。 ではこのDNAすべてが遺伝子となっているのでしょうか。 実は遺伝子として実際に働いていて特定のタンパク質を作っているのは全DNAの約2%に過ぎないのです。 |
この二重らせん構造を模式的に表すと以下のようになります。
つまり、4種類の核酸塩基の中、A‐T , C‐G の組み合わせによって結びつきが形成され、その外側に糖が、そして一番外側に 燐酸基がついて二重らせんを形成しているのです。